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 やるべきことを先延ばしして締め切りに間に合わず、「自分はダメだ」という自己嫌悪感が深まっていく……。こうした悩みを抱える人は多いが、中には仕事の重要な書類を仕上げられずに離職につながる、といった重度の悩みを抱える人もいる。

 こうした悩みを、オンラインによる「第三者からの見守り」サービスで解消できないか。スペインと日本の研究者が共同で、そんな実証研究を始める。9月12日まで参加者を募っている。

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 スペインのエウロペア大学と、心理学博士で臨床心理士の中島美鈴さんによる共同研究。中島さんが開発に携わった「SomeBuddy(サムバディ)」というツールを使う。何かに集中して取り組みたい日時をオンラインで予約して、パートナーを募る。時間になったらオンラインのビデオ通話をつなぎ、開始と終了時にチャットなどであいさつを交わすほかは、それぞれが自身の作業を進める。画像や音声のオン・オフ、取り組むことの種類(デスクワーク・運動・その他)、取り組む時間(25~75分)などを設定できるという。

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先延ばしの克服を支援するツール「SomeBuddy」の予約画面の例。1枠は25分、50分、75分から選ぶ

 「1人では勉強や仕事が進まない」「やるべきことを先延ばししてしまう」という悩みを抱える人は、実は世界中にいるという。米国では数年前から、同様の「他人による見守り」で作業効率を上げるサービスが始まり、世界各国で利用者が広がっている。日本でも、スマートフォンのアプリを使い複数人が目標を共有して一緒に取り組むツールや、コロナ禍以降、複数人がオンラインで集う自習室などが普及してきている。

 ただ、計画を立てたり、それを脱線せずに続けたりすることが苦手な注意欠如多動症(ADHD)の大人を多く支援してきた中島さんによると、特性が強い人の中には、こうしたグループ制の取り組みではなかなか先延ばしが克服できなかったり、計画を立てるところまではできても、「実行する」段階でつまずいたりする人もいたという。仕事の要職についている人が、重要な書類を期日までに仕上げられずに悩むケースなども、数多く見てきた。

見守りツール、科学的に効果があるか検証へ

 そこで、今回の研究では、1対1で、リアルタイムに第三者とつながることによる、先延ばしの改善効果を確かめる。

 対象は18歳以上の、先延ばしで困っている人。困り具合の軽重は問わず、誰でも参加できる。2カ月間ツールを使ってもらい、日常生活や仕事での困り事、うつ・不安といった心理的な不調がどれくらい改善したかを、国際的な評価指標でスコア化して比較する。ADHDの特性の強さに応じた効果なども、合わせて検証する。

 共同研究者でエウロペア大学のカルロス・ロペス博士は「先延ばしは、世界中の多くの人にとって、フラストレーションを引き起こすものだ。先延ばし行動への対処を支援する、科学的な根拠に基づいた介入方法を検証したい」とコメントした。

 参加希望者には、12日午後9時から説明会がある。詳しくはウェブサイト(https://somebuddy.peatix.com/)へ。

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